図鑑No.6
- 2014/10/06
- 18:47
【図鑑No.6】
名前:パイロット・J
性別:男
身長:179cm
タイプ:技術
特徴:特別な尿素
説明:
彼は火星軍のベテランパイロット「J」。
本当の名は彼が軍に入隊したその日から失われた。
彼の名を知る者も皆、戦死し、彼自身もかつての自分の名を忘れかけている。
宇宙空間戦闘兵器アンモムの操作技術は軍随一。
----------
火星と地球の戦争はもう数十年も静かに続いていた。
発達した技術により人類が火星に移住し、2世紀程経過した頃だったか。
はじめは各国が火星の土地を分割し、各国の領土としてそれぞれの自治により小さな集合を作っていた。
しだいに、領土同士の交流が栄え生活の大半を地球の援助なしで行えるようになり、領土という境界が曖昧になっていった。そんな中、生まれたのが火星の独立宣言である。
地球からの援助を受けず、地球からの干渉も受けず、火星は火星の中の法と秩序で国家を作る。
この宣言は火星の民の多くから支持を受けたが、地球の者からの反発は強かった。ここから始まったのが人間の歴史の中で初となる惑星間での戦争である。
戦争とは言っても地球、火星ともに当時は宇宙空間で戦闘可能な兵器がなく、演説やネットワーク内での論争といった政治戦争であった。また、戦争中といっても貿易は継続され、交流が途絶えることはなかった。
このためか、当時の人達は危機感を持つものは少なかったというが、評論家はこの時期を火薬庫の中の平和と称した。
戦争から2年目の8月、いつものように地球からの物資が港に来る。戦争中とはいえ地球との交流は日常のものとなっていた。何も警戒せずにコンテナのレバーに手をかける作業員。だが、コンテナには多量の爆薬が仕掛けられていた。
火の海に包まれる港。地球の過激派の連中が物資に爆薬を混ぜていたのだ。この事件から今までとは異なる本格的な戦争が始まることになる。
火星は宇宙空間での戦闘が可能な兵器【アンモム】を開発。
アンモムはパイロットの尿素と宇宙内の窒素からエネルギーを生成し活動ができることから、パイロットの生命活動さえ維持できていればほぼ無制限に活動可能な画期的な兵器であった。
ただ、人体に含まれる尿の微妙成分の違いで性能面の大きなバラつきがあることからアンモムに搭乗できるパイロットは限られていた。
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彼が軍に志願したのは14歳のとき。
両親を事故により早くに亡くし、火星の孤児院で育てられた。
戦争が激化したことで孤児院に補助は回らなくなっていることを知り、少しでも負担を軽くできればと思い、軍隊に志願可能な14歳になったときに孤児院をでて入隊した。
当時、火星軍では志願した若者に過去との決別の意味合いで別名をつけることが主流となっていた。
彼の場合、当時よく着ていたパーカーの胸に大きくJと刺繍がされていたことから、Jと名付けられた。
25歳までは火星内の小さな部隊で運搬車両の護衛を勤めていた。
ある日、以前行った健康診断の結果により適正が認められ、大都市でのアンモムパイロット訓練機関に配属となる。
アンモムが操作可能となる尿素の性質上、自分が一番若く、同期の訓練生は自分より一周り、二周り年上ばかりだった。
アンモムの訓練は3年のプログラムで形成され、精密な身体検査と宇宙空間での戦闘訓練、またアンモム自身の技術部分の頭に叩きいれる期間が続いた。
なお、訓練生のほとんどは年配の軍人であり、新たな技術についていけないもの、体調を崩し辞退するものが続出した。
配属当時63人いた訓練生も修了時点では10分の1である6人まで減っていた。
軍内には今まで数こそ少ないながらアンモムは配備されていたが、アンモムの技術についていけず、性能を活かしきれず戦死するものがほとんどだった。
火星軍はアンモムの訓練を受け、アンモムだけで組織した精鋭部隊を作るためにJを含む6人を訓練していたのだ。
アンモムの操縦に特化した訓練を経た6人は軍からも国民からも期待されていた。
だが、実戦でのチームワークはボロボロ。一人また一人と数は減っていき、新しいアンモムパイロットが補充される日々を過ごした。
いつしかアンモムパイロットの中で自分が一番年齢も経験も積んでいた。
操作にも慣れ、手足のようにアンモムを操作できるようになった。
彼だけは戦場で死なない。だが、彼がいくら敵を倒しても戦争は終わらない。そして技術が高くても、自分ひとりでは後輩達を守りきれず、多くの仲間を失っていった。
この姿はパイロットスーツを脱いだ彼のプライベートな姿だ。
戦闘の光を前線で見過ぎた結果、彼の目はほとんど光を感じ取ることはできない。
アンモムのパイロット補助機能がなければ視覚を正常に機能させることはできないのだ。
彼の顔から漂う哀愁は仲間を失い続けたものからか。
守れなかった悔しさか。敵への憎しみか。
違う。
15年以上アンモムによって尿素を吸収され続け、狭いコックピット内で宇宙空間を漂い続けた後遺症のようなものである。
彼のような戦士がいるからこそ、テクノロジーが進歩し、軍の士気が高まるのだ。
平和を唱える宗教家よりも、戦争を終わらせる政治家よりも、前線で戦う彼のような男が本当の英雄として讃えられるべきだ。
<出典>
◎アンモム-パイロットの軌跡- (kamaboko出版)
◎よくわかる!地球と火星 (kamaboko出版)
◎惑星戦争大全(kamaboko出版)
◎パイロットの苦悩(著:J / 自費出版)
※すべて架空の書物である
名前:パイロット・J
性別:男
身長:179cm
タイプ:技術
特徴:特別な尿素
説明:
彼は火星軍のベテランパイロット「J」。
本当の名は彼が軍に入隊したその日から失われた。
彼の名を知る者も皆、戦死し、彼自身もかつての自分の名を忘れかけている。
宇宙空間戦闘兵器アンモムの操作技術は軍随一。
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火星と地球の戦争はもう数十年も静かに続いていた。
発達した技術により人類が火星に移住し、2世紀程経過した頃だったか。
はじめは各国が火星の土地を分割し、各国の領土としてそれぞれの自治により小さな集合を作っていた。
しだいに、領土同士の交流が栄え生活の大半を地球の援助なしで行えるようになり、領土という境界が曖昧になっていった。そんな中、生まれたのが火星の独立宣言である。
地球からの援助を受けず、地球からの干渉も受けず、火星は火星の中の法と秩序で国家を作る。
この宣言は火星の民の多くから支持を受けたが、地球の者からの反発は強かった。ここから始まったのが人間の歴史の中で初となる惑星間での戦争である。
戦争とは言っても地球、火星ともに当時は宇宙空間で戦闘可能な兵器がなく、演説やネットワーク内での論争といった政治戦争であった。また、戦争中といっても貿易は継続され、交流が途絶えることはなかった。
このためか、当時の人達は危機感を持つものは少なかったというが、評論家はこの時期を火薬庫の中の平和と称した。
戦争から2年目の8月、いつものように地球からの物資が港に来る。戦争中とはいえ地球との交流は日常のものとなっていた。何も警戒せずにコンテナのレバーに手をかける作業員。だが、コンテナには多量の爆薬が仕掛けられていた。
火の海に包まれる港。地球の過激派の連中が物資に爆薬を混ぜていたのだ。この事件から今までとは異なる本格的な戦争が始まることになる。
火星は宇宙空間での戦闘が可能な兵器【アンモム】を開発。
アンモムはパイロットの尿素と宇宙内の窒素からエネルギーを生成し活動ができることから、パイロットの生命活動さえ維持できていればほぼ無制限に活動可能な画期的な兵器であった。
ただ、人体に含まれる尿の微妙成分の違いで性能面の大きなバラつきがあることからアンモムに搭乗できるパイロットは限られていた。
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彼が軍に志願したのは14歳のとき。
両親を事故により早くに亡くし、火星の孤児院で育てられた。
戦争が激化したことで孤児院に補助は回らなくなっていることを知り、少しでも負担を軽くできればと思い、軍隊に志願可能な14歳になったときに孤児院をでて入隊した。
当時、火星軍では志願した若者に過去との決別の意味合いで別名をつけることが主流となっていた。
彼の場合、当時よく着ていたパーカーの胸に大きくJと刺繍がされていたことから、Jと名付けられた。
25歳までは火星内の小さな部隊で運搬車両の護衛を勤めていた。
ある日、以前行った健康診断の結果により適正が認められ、大都市でのアンモムパイロット訓練機関に配属となる。
アンモムが操作可能となる尿素の性質上、自分が一番若く、同期の訓練生は自分より一周り、二周り年上ばかりだった。
アンモムの訓練は3年のプログラムで形成され、精密な身体検査と宇宙空間での戦闘訓練、またアンモム自身の技術部分の頭に叩きいれる期間が続いた。
なお、訓練生のほとんどは年配の軍人であり、新たな技術についていけないもの、体調を崩し辞退するものが続出した。
配属当時63人いた訓練生も修了時点では10分の1である6人まで減っていた。
軍内には今まで数こそ少ないながらアンモムは配備されていたが、アンモムの技術についていけず、性能を活かしきれず戦死するものがほとんどだった。
火星軍はアンモムの訓練を受け、アンモムだけで組織した精鋭部隊を作るためにJを含む6人を訓練していたのだ。
アンモムの操縦に特化した訓練を経た6人は軍からも国民からも期待されていた。
だが、実戦でのチームワークはボロボロ。一人また一人と数は減っていき、新しいアンモムパイロットが補充される日々を過ごした。
いつしかアンモムパイロットの中で自分が一番年齢も経験も積んでいた。
操作にも慣れ、手足のようにアンモムを操作できるようになった。
彼だけは戦場で死なない。だが、彼がいくら敵を倒しても戦争は終わらない。そして技術が高くても、自分ひとりでは後輩達を守りきれず、多くの仲間を失っていった。
この姿はパイロットスーツを脱いだ彼のプライベートな姿だ。
戦闘の光を前線で見過ぎた結果、彼の目はほとんど光を感じ取ることはできない。
アンモムのパイロット補助機能がなければ視覚を正常に機能させることはできないのだ。
彼の顔から漂う哀愁は仲間を失い続けたものからか。
守れなかった悔しさか。敵への憎しみか。
違う。
15年以上アンモムによって尿素を吸収され続け、狭いコックピット内で宇宙空間を漂い続けた後遺症のようなものである。
彼のような戦士がいるからこそ、テクノロジーが進歩し、軍の士気が高まるのだ。
平和を唱える宗教家よりも、戦争を終わらせる政治家よりも、前線で戦う彼のような男が本当の英雄として讃えられるべきだ。
<出典>
◎アンモム-パイロットの軌跡- (kamaboko出版)
◎よくわかる!地球と火星 (kamaboko出版)
◎惑星戦争大全(kamaboko出版)
◎パイロットの苦悩(著:J / 自費出版)
※すべて架空の書物である