イノベーションVS俺
- 2014/08/22
- 00:53
イノベーションVS俺
私たちチームkamabokoは
「革新的なコミュニケーションツールであり、常識を覆し、人類の想像を一歩先へ進める方法だ。」
という目標の上でこれからチームとして活動していく。
我々のメンバーである「あじ」が先日発表させて頂いたばかりだ。
世界の変革を担ってきた者、先駆者、冒険家。
色々の立場の者たちは始めは社会や世間から認められず、その良さが一般に広く認識されて初めて評価を受ける事が大多数であった。
かのピカソも死後その価値が認められるが、生前は苦悩と苦痛の人生を送り、生きている時に彼がその賞賛を浴びる事は無かった。
新しい発見というのは批判されるだけではなく、時に自身の命を脅かす事もある。
天動説を唱えたガリレオ・ガリレイは異端審問(宗教裁判)にかけられた。
裁判という名前を冠してはいるが弁明の余地などはなく、考えを改めないと死刑。
というような厳しいものであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
かつて生物学者であるダーウィンは南米の孤島ガラパゴス諸島で着想を得て、神の教えを否定する原理を究明し発表した。
「進化論」である。
キリスト教圏では物議が巻き起こった。
”神の造りし子”という自分のアイデンティティを否定されて民衆は混乱の渦に飲み込まれただろう。
現代であれば、人間の起源は宇宙人だった。
と、判明しても「へ~!すげ~!!!」とかtwitterでつぶやく。
合コンで
イケメン「俺たち宇宙人に作られたらしいよ。」
Aちゃん「え~怖い~」
イケメン「何も怖い事なんて無いよ。俺たちの起源がなんだろうと、君への愛は変わらない。」
Aちゃん「好き!抱いて!!」
こんなセンセーショナルな謎の解明がされても現代の日本での影響なんてこんな程度ですよ。
あとは、たま出版の韮沢さんがハッスルし過ぎて東スポで一面記事にされる位。
とりあえずイケメンは消滅した方が良いと思うんですよ。
世界のために・・・そしてぷにちんの精神の安定のために・・・
進化論が提唱された19世紀。
その発表は当時隆盛を誇ったキリスト教信仰者の”人は神が造りしもの”という「創造論」と真っ向から対立した。
1820年 フランス・・・
フランス北西部の海沿いに位置するブルターニュ地方のプーニの村。
今では村の痕跡もなく、調和の取れた自然の景観から地域一帯が1996年にユネスコ自然遺産にも登録された場所に2人の幼い子供がいた。
奔放な航海士の父のもとで育ち、
新大陸発見の知らせや冒険潭に胸をワクワクさせ、いつか自分も大発見をしてみせる。
と日夜冒険ごっこに明け暮れる少年・・・アラン
敬虔なクリスチャンの両親のもとで育ち
両親の農作業と牧畜の世話を手伝う心優しき女の子・・・エミリー
2人は性格こそ違えど、村に数少ない同世代の子供という事もあってとても仲が良かった。
アラン 「俺、大きくなったら船乗りになって絶対新しい大陸を見つけるんだ。」
エミリー「ふふっ。見つけたら私もそこに連れてってね。」
アラン 「分かった。絶対つれてってあげるね。」
野山を駆け巡り、藁のベッドで昼寝、お腹が空いたら山ぶどうを摘む。
2人の思い出は代わり映えしないものであったが、かけがえのない日々であった。
そんな幼年期を過ごし、2人は友達からお互いを異性として意識する年齢に達していた。
父と同じ道を歩み、航海士になったアラン。
荒れ狂う海原と戦い、見知らぬ土地では初めて見る動植物。
異人との出会いや見た事もない食材。
全てが子供の頃に想像した冒険以上の毎日であった。
今回も無事に航海を終え、2年ぶりに村へ戻って来たアラン。
刈り入れの季節。懐かしい村では青々とした草木が芽吹き、心地良い風が吹いている。
両親は既に他界しており帰郷しても、孤独感に苛まれる村ではあったがそれでも帰郷する理由が彼にはあった。
村で唯一の教会。
寂れた村の雰囲気とは対称的に白いペンキが映えるそこには、昔と変わらず腰の曲がった神父がいる。
この季節、村の大人達は日曜の礼拝の時しか訪教会に訪れない。
学校の無いこの村では神父が説法を教訓として子供に教えていた。
その教会で神父様を手伝い、シスターになった彼女・・・その佇まいには幼いころの面影を残していた。
子供「先生!バイバイ~」
優しい笑顔を湛えて子供を見守るその姿は女性としての魅力を備えたエミリーだった。
2年振りに戻った故郷、以前よりも更に魅力的になったその姿。
ひとしきりその笑顔を眺めたあと、アランは気を引き締めると、エミリーの元へ歩いた。
2年前、村を出て航海士としての道を歩む事を決意したアレン。
航海に出発する前日、エミリーにプロポーズをしたが、駄目だった。
彼女には自分しかいないなどと自惚れていた訳では決して無い。
だけどお互い愛おしく感じている。気持ちが通じ合っていると心で感じられた。
一陣の風が草原を薙いだ。エミリーがアランに気づく。
その瞳から彼女の心情は読み取れない。
だけどこの気持ちは変わらない。
この愛を捧げるのは生涯この人だけだ。
2年の歳月は彼女への愛をより一層強いものにしていた。
そして2年前と全く同じ台詞を口にした。
アラン「エミリー、僕と結婚してくれ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そよ風が髪を撫でる。
アランが村を出てから2年の歳月が経っていた。
エミリーが始めてあの言葉をアランから受け取ったあの日、今日と同じ風が吹いていた。
「あなたと一緒には行けない。私には家族と私を必要としてくれる子供達がいるもの。」
自然と口から零れ落ちた言葉。
それが本心ではない事はエミリーが一番分かっていた。
今すぐにでもアランの胸に飛び込み抱きしめて欲しい。髪を撫でて欲しい。
・・・でも出来なかった。
アランは航海士になるためにその後すぐに村を出ていった。
連日晴天が続いていたがその夜から3日間、空が私の代わりに泣いてくれた。
その後も私の中で雨が止む事はなかった。
神にも言えぬ後悔の念を抱えたまま、あれから2年を過ごした。
アランと最後に話したのもこんな日だったわね・・・
彼はきっともうこの村には戻って来ないだろう。
自分の気持ちに嘘をついた私は一生を神に捧げよう。
だけど、もし、もしアランが許してくれるなら今度こそ私は自分の気持ちを正直に打ち明けよう。
ひと際強い風が吹き、顔を伏せる。
再び顔を上げた時、目の前には逞しい姿のアランがいた。
思いがけない現実。事実とは考えられない・・・
あなたの名前。呼んだらそこで突然目が覚めそう
こんなにうまくいきっこない。また偶然逢えるなんて・・・
ときめきの導火線に火がつきそうになるのを感じながら
彼がまた自分のもとへ戻って来た理由を逡巡した。
きっと彼の冒険は成功し、素敵な伴侶も見つけた。
もしかしたら子供だっているかもしれない・・・
きっとこんな小さな村で何も成し遂げる事無く終える私の人生を嘲りに来たのだわ。
自分の気持ちに素直になれずに彼を傷つけた私にはお似合いの罰ね・・・
自虐的な気持ちを拭いきれないまま、アランを見つめなおすエミリー。
そこには蔑みや侮蔑の色など微塵も纏わず、柔らかな微笑みと確かな決意を秘めた以前と同じ視線があった。
彼女は全てを悟った。
愛は目に見えないものというが確かにそこには愛があった。
エミリーにはアランが何故また村に帰って来たのか、この後アランは何を言うのか、そして私はなんて答えるのか。
それから2人はどうなるのか・・・
全てが白昼夢の様にフラッシュバックして見えた。
あの日から、ずっとやり直したい。と考えない日は無かった。
なぜ一言「はい」と彼の気持ち、そして自分の正直な気持ちに応えられなかったのか、
これまでの後悔の日々を全て無かった事にする答えが待っている。
周りの景色が、いや時間が止まっている様な感覚の中、永遠とも思える静寂の後にアランの言葉が聞こえてきた。
「エミリー、僕と結婚してくれ」
分かっていた。
その言葉を投げかけてくれるのは分かっていた。
幾百、幾千回もこの時をイメージした。
想像の中では何度も「はい」と小さく答えた。
たったの2文字。それを発するだけで幸せになれるのは分かっている。
とどめようのない感情の渦が涙となり溢れ、彼女はその場に座り込んだ。
アランも全てを悟った。
「2年間も苦しい思いをさせてすまない。今度は君を離さない。」
泣き崩れるエミリーの頭を胸で受け止め、優しく包み込む。
エミリーも精一杯の力を込めてアランの服の裾を握りしめた。
もう離れたくない。
言葉にせずともお互いがお互いを強く理解していた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それから幾年の年月が流れた。
幸せな日々は穏やかに流れ、2人の子宝にも恵まれた。
元気で小さな女の子クロエ3歳。虫取りが得意なジョゼフ5歳。
クロエはいつもジョゼフの後ろをついて回り、ジョゼフは邪見な態度を取りながらもクロエを守ってあげていた。
航海士を続けていたアランは数ヶ月、家を空ける事も多かったが2人の小さな子供は
父の持ってくる見た事も無いお土産とそれ以上にアランの語る冒険潭を毎回楽しみにしていた。
アラン「南の島には角が3本もあるカブトムシがいたぞぉ!」
ジョゼフ「お父さん!本当!?僕見てみたい。」
クロエ「ワタチも見たい!!」
エミリー「ふふっ。さあもう寝る時間でしょ。続きは明日。」
クロエ・ジョゼフ「おやすみなさい。」
幸せな日々は永遠に続くかとも思われた。
いや永遠に続かないからその瞬間を「幸せ」と言うのかもしれない。
ある1冊の書物によって幸せな日常は誰も気づかないほどゆっくりと変化していった。
ジョゼフ「ねぇねぇーお父さん。”しんかろん”って何?」
アラン 「ジョゼフ、難しい言葉を知ってるな。進化論っていうのはね・・・」
世界各地を旅し、色々な知識を持っているアランは出来るだけ簡単に説明してあげた。
人間は神が造ったものでは無く、長い時間をかけて環境に応じて変化して今の姿になった。
他の動物もそうやって今の世界があるんだよ。と。
ジョゼフ「神父さんが教えてくれた話しと全然違うよ。神父さんは嘘つきなの・・・?」
アラン「いいや、神父さんは嘘つきなんかじゃないよ。神様の教えをみんなに教えてくれる立派な人だ。」
ジョゼフ「うーん。僕良く分からないよ・・・」
アラン「いいかいジョゼフ。何が正しいかは自分の目で見て、どう感じるかで決める事だ。焦らなくていいんだよ。」
ジョゼフ「良く分からないけど、わかった!」
アラン「よしっ!さすが私の息子だ。今日はもう遅いから寝なさい。」
ジョゼフ「はーい。」
寝室に向かう我が子を見送った後、竈の前で編み物をするエミリーに話しかけた。
アラン「なぁ・・・ジョゼフはどこで進化論の話しを聞いたんだろうか?」
エミリーは珍しく曇った顔をアランに向けた。
エミリー「最近どこかの地方からきた伝道師だかって人が紙を撒きながら宣伝活動をしているのよ。
教えに反する事を流布するなんて、神への冒涜だわ。」
アラン「まぁまぁ。信仰は自由だし、新たな教義と言うのは世間から反発が出るものでもあるから
成り行きを見守れば良いよ。その説がまやかしなら神の教えを揺るがす事は決して無いさ。」
不の感情を露にする事が滅多に無いエミリーを宥めるアラン。
各地を旅するアランは進化論論争により暴動にまで過熱する地域があった事を思い出した。
・・・この村は穏やかな村だ、そんなことにはならないだろう。
拭いきれない不安をかき消すため自分に言い聞かせたが、何故かその夜は眠れなかった。
夜の闇の先では風が強く吹いていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
当時文化の隆盛を誇るフランスでも識字率は低かった。その数まさに7%という数値だった。
ある程度大きな町などでは役人がおり、そういった役職の者は書簡を作成し、文章の読み書きを求められる。
それら役人の数を含めて7%という数値なので、一般人はほとんど文字が読めない時代だった。
牧歌的な村では家畜の世話ができる、種まきと刈り入れの時期が分かる、それだけで幸せな人生を送れた。
あとはおいしいブドウ酒と楽器が弾ければもっと幸せだ。
プーニ村の当時の人口は文献によると80~140人程度。
恐らく文字を読めたのは神父とアラン、後は数人程度だったろう。
当時の社会では情報発信は新聞などの印刷物ではなく、役人の伝令係が村人を集めて今年の税の告知をしたり、
吟遊詩人のような旅の流れ者からの情報が全てだった。
そんな村に伝道師が来た。
進化論・・・。
初めは何の話しをしているか分からない村人達だったが
情報に裏付けされる話しを何度も聞いている内にその教えが正しいのではないか?と信じる者も出て来た。
今までは気が振れてしまった者の戯れ言と無視していた信仰深い村人達もこの状況は楽観視出来なかった。
伝道師は信仰深い者からは「悪魔の遣い」「信仰を脅かす者」として
蔑まれるだけでは無く、石を投げられたり犬をけしかけられたりした。
もちろん伝道師が混乱を招くためにこういった活動をしていた訳ではない。
文明が進歩していく時代の中で、技術や正しい知識が無いために都会では簡単に治る病気で失われる命。
不当な重税を課され、搾取され続ける民衆。
それら弱い立場の民衆の生活水準の向上および解放。ひいては国をより良くしようという思想の元での活動である。
その道中で命を落とすものもいたが彼らの信念も強かった。
伝道師「私達は信仰を否定している訳ではない。ただ"真実"を広めているのだ。」
石を投げつけられようが、犬に教われようが、伝道師達は暴力に訴えかけることは無かった。
そんな彼らの語る言葉を信じる者、暴力に訴えかける信仰者達に反発する者などが少しづつ
伝道師にその日の寝床を貸したり、食事を一緒にとったりと村でも伝道師達に居場所が出来てきた。
ジョゼフに進化論の話しをした数日後。
次の船旅に備えて食料の準備や、船の整備から戻って来たアラン。
いつものようにジョゼフが飛びついてくるが小さく震えている事にアランは気づいた。
アラン「どうしたジョゼフ?怖い夢でもみたのかい?」
出来るだけ穏やかに話しかけるアラン。
ジョゼフ「違うよ。僕もう5歳だもん。夢なんか怖くないやい。」
小さいながらも気丈に振る舞う我が子の成長を嬉しく思う反面、何を怖がっているのか分からなくなってしまった。
ジョゼフ「あのね。ずっと仲良しだったジョルジュおじさんとアンおばさんが今日ケンカしてたんだ・・・
2人だけじゃないよ。最近村の皆が少し怒っているみたいなんだ・・・僕何か悪い事したのかな?」
アランは以前、イギリスの町で同じ様な状況を見ていた。
プーニ村なんかよりもっと人口が多くて識字率も高い。
議論も高等なレベルで行われていたが、最後は暴力の応酬になり、軍が鎮圧をする騒ぎにまでなった。
アラン「ジョゼフ・・・お前が悪い事をする訳無いじゃないか。もししてもすぐにごめんなさいって言えるだろう?
ちゃんと謝ったらみんな許してくれるさ。」
ジョゼフ「前パパに聞いた、”しんかろん”って言うのと関係あるのかな?
みんな神様が何とかって話してたけど僕には難しくて分からなかったんだ。
なんで神様の事で皆がケンカするのかな?だって神様は皆を幸せにしてくれるっていつもママがお話してくれるよ。」
アラン 「ジョゼフはちゃんとママの話しを聞いているんだな。
ジョゼフはママとパパのどっちが好きか聞かれたらすぐ答えられるかい?
どっちか一つだけ選ばなきゃ駄目だって言われたらどうする?」
ジョゼフ「え!?僕パパもママも好きだよ。2人とも好きじゃ駄目なの・・・?」
アラン 「ジョゼフは賢い子だ。
村の皆もそんな風に考えれたらケンカも無くなるんだけど大人は少しガンコなのかもしれないな。」
ジョゼフ「大人って難しくて良く分からないや。僕それならずっと子供がいいな。」
アラン 「ははは。それは困るな。ジョゼフには早く大人になってママを守れる男になってもらわなきゃ。」
ジョゼフ「そっか。パパが居ない時は僕がママを守るって約束したもんね。」
アラン 「そうだね。期待しているよ。」
ジョゼフ「うん。僕早く大人になるね。」
ジョゼフを宥めた後、以前感じていた不安がより大きく、現実の物になって自分たち家族の元へ迫っている事を感じた。
子供達が寝静まった後、竈の前で編み物をしているエミリーにジョゼフから聞いた話し、
進化論の論争でイギリスの町で見た光景をエミリーに語った。
アラン「エミリー、僕は今の村の状況が心配だ。この憎しみが僕らの幸せも壊すときがくるのではないだろうか・・・?」
エミリー「確かに少しいざこざはあるけど大丈夫よ。だって私たちには神の加護がありますもの。」
アランは無神論者では無い。
毎週日曜日は教会に行くし、もちろん家族の幸せを神に祈る。
だが敬虔なクリスチャンと言う訳でもなかった。
今までの航海士の体験から言えば、絶望的な状況において祈りや救いは無く、残酷な現実が訪れる事を目の当たりにしてきた。
青年と呼ぶにはまだ若い男”フランツ”は病気の母親と小さな弟たちを養うために船乗りになった。
しかし荒れ狂う海原に飲み込まれ、遺体を見つけることは出来なかった。
いつも弟たちの作ってくれた均整のとれていない木製の十字架を大事に持っていた。
荒れ狂う航海を無事に終えた後、いつも言っていた彼の言葉が忘れられない。
「俺には神様がついていますから。大丈夫です。」
フランツの死後、彼の遺品を母親の元に送り届ける役目を担った。
彼の母親は泣き崩れ、神に対する憎しみの言葉を投げつけた。
アランはぶつけようのない気持ちを胸に秘めたままその場を去った・・・。
その後も何度かそういった状況に立会い、神はいるかもしれないが
いたとしても救いの手を差し伸べるような存在でないことを痛感した。
普遍の存在の神が人に手を差し伸べることがあれば、その姿が確定し”普遍”ではなくなる。
それは神の不在が証明されることをも意味しているからだ。
もしそのようなことがあれば救いのない世界。
神が不在の世界。希望という”生”への活力が失われることとなるだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それからも進化論を信じる者たちと神の信仰者達の対立は少しずつエスカレートしてはいたが
一線を越えるような事件はなかった。
そんなある日、教会の側で奇形のカエルが見つかった・・・
伝道師は悪魔の遣いだ。この村の人々も最終的には異形の姿に変えるつもりだ・・・
信仰者達の敵意はもう各々の心の中に留められる物では無かった。
はじめは小さな流れだった敵意は、疑心暗鬼を喰らいどんどんその規模を増していった。
張り詰めた緊張状態にこれ以上耐えられるほど皆強くはなかった。
誰かが”敵”の家に火をつける。火をつけられた者は嘆き悲しむ間もなく相手の家に火をつける。
復讐の連鎖が始まり炎が村を包んだ。
自分と相容れない認識の者。姿形の異なる者をなぜ人は許容できないのだろうか?
村の外れに住んでいた、アラン達家族は炎と黒煙に包まれた現実感の無い光景に圧倒されていた。
アラン 「早く村を出よう!」
エミリー「村の人たちを置いて私達だけ逃げることは出来ないわ。教会に子供達は避難しているはずよ。見に行くわ。」
アラン 「君の気持ちはわかる。だけど今は一時的でもいいから村を離れよう。」
エミリー「私は神の教えを村の子供達にも伝えてきたわ。ここで私が逃げてしまったら神の教えを反故にすることになるわ。
アランの事は今も変わらず愛してる。だけど神の教えは私のアイデンティティなの。あなたならわかってくれるでしょ?」
アラン 「分かった。僕も一緒に行くよ。」
エミリー「駄目よ。私達2人に何かあったらジョゼフとクロエはどうなるの?」
君がいなくなったら僕はどうすればいいんだ?
喉まで出掛かった言葉を飲み込んだ。ここで彼女を力づくで止めることは簡単だ。
ただその後生き残ったとしても彼女は今までの彼女ではなくなってしまう。
アランとエミリー、2人とも泣いていた。ジョゼフとクロエも子供ながらにこの空気を感じて押し黙って泣いていた。
アラン 「分かった。僕はジョゼフとクロエを守る。エミリー。必ず生きて帰ってくれ。」
エミリー「私には神様がついているから大丈夫よ。」
以前同じ台詞を言った、フランツの顔が脳裏をよぎる。
手を伸ばせば届く距離にいる彼女が急に遠くに感じられた。
教会に駆けていくエミリー。
その後ろ姿を見えなくなるまでずっとずっと見届けていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜が明けた。
いつ暴徒がこの家に来るかもしれない・・・
極限の緊張感の中、スヤスヤと寝息を立てる2人の子供の寝顔を見守りながらアランはいても立ってもいられない気分だった。
頼むから無事でいてくれエミリー。
村中心部から立ち上っていた炎、煙ももう見えない。
家は燃えたが沢山の人たちが生き残り、どこかで集まって夜を明かしたのではないか?
今はもう静寂が包む村を眺めてアランは希望を見出していた。
ジョゼフを揺すって起こす。
ジョゼフ「パパ、おはよう。」
いつもと変わらぬ日常の挨拶が返ってくる。昨日の事をまだ思い出していないようだ。
極力不安を与えないように優しく諭す。
アラン 「おはよう。ジョゼフ。お父さんは少し散歩をしてくるから良い子で留守番できるかな?」
ジョゼフ「うん。わかった。いい子で留守番してるね。」
アラン 「ああ。頼んだよ。」
寝ぼけ眼のわが子を安全な家に置いて、村へと駆け出す。
こんなにも自分の体がもっと早く動いてくれともどかしく感じた事は無い。
村が見えてきた。
素朴ながらも笑顔と優しさであふれた村。
今も目を閉じると思い出される光景と眼前に広がっている景色はあまりにもかけ離れたものだった。
木造の建物がほとんどだったが、それらはどれも崩れ、黒い炭の残骸を残すだけの姿に変わり果てていた。
まだ熱気を孕むそれは、燻り細い紫煙を立ち上らせ続けている。
毎年、収穫祭が行われる広場には血の跡が点々と染み付き、沢山の屍もある。
それらに一瞥を向けエミリーがいない事を確認するとアランは急いで教会に向かった。
胸騒ぎが止まらない、いや・・・どんどん大きくなっていく。
遠くの丘に教会の建物が見えた。
しかしその外観は村でも一番を誇る白い建物だったが、遠目に見ても漆黒の闇の色が覆い尽くしているのが分かった。
アラン 「エミリー。」
建物が焼けていても彼女は無事かも知れない。まだ希望はある。
そう自分に言い聞かせて、アランは走った。
その道中でも生きている村人に会う事は叶わなかった・・・
教会。 神の休息の地であるはずのそこは平穏や安寧とはかけ離れた場所と化していた。
建物はその骨組みだけを残し崩れ果て、中には小さな子供と思われる亡骸がいくつか横たわっていた。
生前の姿が判別出来ないほど炭化したその中に、大人と思われる大きさの亡骸があった。
他の亡骸がその亡骸を囲むように位置し、真ん中の亡骸は神に祈りを捧げる様な姿のままだった。
祈りの形で組まれた手の薬指にはアランの指にあるのと同じデザインの指輪が煤にまみれてつけられていた。
アランはその場で泣き崩れた。
彼女にすがり、なぜ僕を置いていくのか。なぜそこにいるのが君なのか。
と答えの出ない問いを神にぶつけたがやはり答えは無かった・・・
アラン、ジョゼフ、クロエの生存者を残しプーニ村は地図から姿を消した。
その後のアラン一家の消息は分からない。
進化論・・・
現在ではその存在や理論に関して一定の認知度と市民権を得ている説だが、
発表当初はまだ人民にそれを許容しうるだけの社会基盤が確立していなかったために悲劇を生んだ論争でもあった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
上で書いた文章は全部嘘なんですけど。
何だよプーニ村って。
絶対書き出しの段階で妄想のストーリーだってバレますよ。
ちなみに作中に出てきた数字や時代背景もすべてぷにちんの妄想です。
時代考証が違うとか文化が違うとかそういったコメントは全部無視します。
と、なぜ上記のような長いストーリーを引用したかというと、それ位革新的な事は当初社会に認められない。
提唱される時代や国が違えばこれほどの悲劇を生みかねない。
そしてそれは実行者である我々チームkamabokoに明日にも降りかかるかもしれないぞ!
という戒めをこめて書いたわけですよ。
ちなみにこの文章を考えてぶつぶつ一人言を呟いてたら、よっぽど怪しく見えたんでしょうね。
警察官に職務質問されましたよ。
私も「妄想のストーリーが膨らみすぎて言葉に出ちゃいました。」なんて言える訳も無く
ぷにちん「違うんですよ。プーニ村が・・・」
などと訳の分からない言い訳をしたら、危ない人と思われたのか車で詳しい質問されちゃいました。
平穏な時代でも異端審問を喰らいそうになりながら、ガリレオの気持ちがちょっと分かった気がしました。
仕事中も妄想が頭に沸いてくるのでこれからも着想を得た項目にて
ぷにちんの独断と偏見に偏った妄想考察、「○○VS俺」を実施していきます。
これからも宜しくお願いいたします。
※注 オチの警察官の下りまで全てぷにちんの妄想のフィクションです。
実際の人物、団体、事件などと一切関連はございません。